之を知るものは、之を好むものに如かず
「之を知るものは、之を好むものに如かず。之を好むものは、之を楽しむものに如かず。」
論語の一節です。之を特定しないところが、孔子の凄いところ。之とは、仕事かも知れませんし、あるいは趣味かも知れません。孔子の元に集う学徒への言葉であれば、学問を之と見立てるのが自然でしょう。しかし、之を人生と見立てると、途端に深遠な言葉となります。とある新年会で、この一節を引用して、私は挨拶を述べました。
「皆様は、多くのことを学ばれ、その手順や作法についての見識は並々ならぬものがあると、推察します。そして、今日まで続けてこられたのは、やはり好きだからだと思います。しかし、その苦労や努力を心から楽しんでいる人は、そう多くはないのではないでしょうか?私も医師として、人並みには知識を持っているつもりで、勉強家とまでは言えないまでも、新しい知見を学ぶことも嫌いではありません。そして臨床家として、患者様とともに病気と向き合い、こまごまとした愁訴に耳を傾けられるのも、この職業が好きだからだと思います。しかし、真に医師であることを楽しんでいるかと問われたら、そこまでの心の余裕を持てない自分を正直に認めないわけにはいきません。医師であることを楽しむこと。それを今年の抱負にしたいと思います。楽しんでいる自分の再発見。皆様も、今年の目標の一つに加えてはいかがでしょうか?」
さて、今年の4月から、沖縄県臨床整形外科医会の会長を拝命させていただくことになりました。前会長である上里博光先生、お疲れ様でした。通常の会長業務に加え、第42回JCOA研修会会長としてその重責を果たされ、会を成功裏に終えることができたことは、ひとえに上里前会長の人柄とご尽力の賜物です。(当然ながら、OCOA会員のサポートが一番の功労であり、上里先生ともども実行委員会の一人として、会員の皆様に深くお礼を申し上げます。)名会長のあとを受けて、若輩である私が、どれほどのことができるか不安ではありますが、変えていかなければいけないこと、変えずに守り続けていくべきものを、しっかりと見極めながら、重職を務めて行けたらと思います。なにとぞ、格別のご指導を賜りたくお願い申し上げます。
「之を知るものは、之を好むものに如かず。之を好むものは、之を楽しむものに如かず。」現在の私は、OCOAの会長という職務の重要性も知らず、知らないが故にそれを好きになるかも分からないというのが本音です。人付き合いや世渡りにはとんと疎い私の欠点を、ほかの執行部の先生方に補ってもらいながら、持ち前の楽天的性格を最大限に生かすことができれば、会長職を案外楽しむことができるかもしれません。それこそが歴代の会長とは、異なるcolorを打ち出せる私の唯一の手段なのかも知れません。乞うご期待と囁くように言わせて頂きます。
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